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公益財団法人ソフトピアジャパンに関するお知らせを表示しています。

2026.07.31

実績など

公益財団法人ソフトピアジャパンの「デジタル化」推進計画(vol.7)

 

vol.7:承認・決裁システムの電子化 ~業務スピードと透明性の向上~

公益財団法人ソフトピアジャパン(以下「財団」という。)では、組織のデジタル化を推進するにあたり、業務の中心的な事務手続きである決裁・承認作業及び経理業務の電子化に取り組みました。今回は、その概要や目的、デジタル化のために解決すべき課題、そして導入によって得られる成果についてご紹介します。

これまでの財団デジタル化

これまでの取り組み記事をご覧になる際は、下記のリンクからご覧ください

◆vol.1:デジタル化への第一歩 ~財団の業務分析と企業DBプロトタイプ試作調査~◆vol.2:デジタル化の舞台裏 ~職員が語る財団の変革~◆vol.3:企業データベース導入の課題と対策 ~課題編~◆R5まとめ:「デジタル化」推進計画 ~ 令和5年度のまとめ ~◆vol.4:クラウドPBXで変わるビジネスコミュニケーション ~財団の未来を見据えたクラウドPBX導入~◆vol.5:公益財団法人におけるBCP対策としてのテレワーク実証 ~事業継続を見据えた働き方~◆vol.6:財団デジタル化の要 ~情報セキュリティの検討~

 

1.背景と課題

財団では、多くの決裁・承認の申請や経理業務で紙書類と押印する手続きが必要であり、効率性やBCPの観点でいくつかの課題を抱えていました。

・承認作業の遅れ
書類の物理的な移動や確認作業を伴うことで、起案から決裁に至る一連の手続きにおいて、承認者の不在などで日数を要することがありました。

・業務効率の低下
法定保存文書をはじめとする紙書類のファイリングや、経年による膨大な保管スペースの確保など、紙媒体の管理に伴う事務的な負担の低減が課題となっていました。
また、過去に作成したと思われる文書の探し出しにかかる手間や、参照したい文書が見つかっても、紙媒体のため同様の文書を作成するのに、一から入力するなど作業の非効率性を感じていました。

・BCP(事業継続計画)のリスク
災害や感染症拡大時において「紙と印鑑に依存した業務」は事業継続(重要な意思決定の手続きやそれに要する時間等)の課題となる可能性がありました。

こうした背景から、財団では単なる効率化に留まらず、意思決定の迅速化(起案から承認・決済までの時間短縮)を図るとともに、手続きプロセスのより明確な管理(可視化)に向けて、承認・決裁手続きの電子化を進めました。

 

2.システム化の方針とシステム開発

既存の独自システムを改良することによるシステム化ではなく、汎用クラウドサービスも比較検討しましたが、財団の事務決裁規程に準拠した詳細な承認ルートの設定や、柔軟な機能追加を行う運用の継続性の観点から、汎用クラウドサービスの導入を見送りました。最終的には、財団の規則改定とシステム構築を並行して柔軟に進められるノーコード開発ツール「Forguncy(フォーガンシー)」による独自開発を選択しました。

※Forguncy(フォーガンシー)とは、Microsoft Excelに近い操作感でWebアプリケーションをノーコード開発できるツールです。業務フローに合わせた画面作成や機能追加を迅速に行えることが特徴です。

 

比較検討のポイント

(◎=優れている、○=標準的、△=制約あり)

項目 Forguncy
(内部開発)
Power Apps承認システム
(内部開発)
市販A社
(市販)
市販B社
(市販)
財団特有の承認フロー対応

業務ごとに柔軟に設計可能

標準機能はあるが複雑な要件対応には制約

一部カスタマイズ可能だが、標準機能中心で制約あり

標準機能が中心、カスタマイズには制約あり
経理要件対応

財団の経理要件に柔軟に対応可能

一部は追加設計が必要

標準的な経理要件には対応、特殊要件は制約あり

標準的な経理要件には対応、特殊要件は制約あり
職員の習熟度

既存運用実績があり馴染みはあるが、現状では一部の職員が中心で操作を担っており、今後の改善が必要

内部開発システムではあるが、職員にとっては新しい仕組みであり、利用には一定の学習が必要

新規導入が必要で、職員にとって学習負担あり

新規導入が必要で、職員にとって学習負担あり
機能追加の柔軟性

内部で迅速に改修可能(ノーコード)

Microsoft Power Platformの範囲で対応可能、複雑な改修は専門知識が必要

ベンダーに依存、改修には時間とコストがかかる

ベンダーに依存、改修には時間とコストがかかる
外部連携

内部開発で必要に応じて対応可能

Microsoft 365、Teams等との親和性が高い

一部可能だが、追加開発が必要になる場合あり

標準的な連携機能を提供
セキュリティ・内部統制対応

承認履歴や電子承認を内部で確実に保存可能

Microsoft標準のセキュリティで保護

ベンダー提供の標準的なセキュリティで保護

ベンダー提供の標準的なセキュリティで保護
保守・メンテナンス

職員内部で対応するため、担当者に頼ることが多い

Microsoftのサポートを受けられる

ベンダーが充実したサポートを提供

ベンダーが充実したサポートを提供
導入・運用コスト

初期構築に職員の時間が必要、運用コストは安いがクラウド利用料が発生

Microsoftライセンス利用料が発生、追加開発でコスト増加の可能性

導入費用・月額料金が明確、ベンダーサポート込み

導入費用・月額料金が明確、ベンダーサポート込み
将来拡張性

内部で柔軟に拡張可能

Microsoft製品群との統合で拡張性あり、ただし自由度に制約

ベンダー次第で制約があり、独自拡張は困難

ベンダー次第で制約があり、独自拡張は困難
備考
※ワークフロー以外にも
活用可能

※開発できる人が社内に必要
SharePoint, Power Apps, Power Automateを活用して開発
※ワークフロー以外にも
活用可能


財団では、これまでもノーコード開発ツールを用いて経理業務の一部で電子化を進めており、出張伺い書の作成や支払いの起案データの作成・参照などで活用してきた実績があります。あわせて、研修事業の受講者管理システムなどの開発・運用実績もあり、職員にとって馴染みがあること、そしてノーコードで柔軟に開発できることが、今回の決裁・承認システムおよび経理業務の完全な電子決裁化においてもForguncyを活用した理由となっています。

 

■規則改定からシステム導入までの流れ

(1)業務フローの分析

これまで財団内で用いられてきた紙ベースの起案から最終決裁に至る一連のフローを整理しました。申請から順次確認を行い、決裁、その後の保管・廃棄に至るまでのプロセスを洗い出し、手続きに時間を要する箇所や、管理負担が大きい部分を明確化しました。

(2)事務決裁規程等の改定

システムの導入にあたっては、従来の「紙と押印」を前提とした事務決裁規程等の見直しを行いました。関係法令や上位基準に準拠しつつ、電子決裁を正式な手続きとして認める形へ適正に改定しました。

(3)独自要件に合わせた内部開発

事務決裁規程等の改定と並行して、内部でシステム開発を行いました。財団独自の要件(承認ルート、文書番号、保存年数など)や運用ルールに適応し、組織の改編等に伴う申請画面や承認ルートの変更・追加にも柔軟かつ迅速に対応できる仕組みを構築しました。

(4)セキュリティ面の考慮

開発にあたっては、利便性だけでなく安全性の確保や法的要件の充足にも配慮しました。システム上で「誰が、いつ、どの書類を申請・承認・決裁したか」という一連の履歴が自動的に保存され、後から書き換えができない状態で記録される仕組みを設けています。
また、文書管理規定に情報セキュリティ区分(秘密区分)を導入し、情報資産としての取り扱いを厳格化しました。

(5)テスト運用と改善

システムは、すぐに本運用へ移行したのではなく、まず一定期間のテスト運用を行いました。その際、実際に利用した職員から操作性や画面表示に関する意見を収集し、改善に反映しました。具体的には、申請・承認・決裁における各一覧画面の視認性向上や、承認・決裁ルートの選択方法などの最適化を行いました。こうした調整を経て本運用を開始したことで、より現場に即した使いやすい仕組みとして稼働するようになりました。

 

 

■期待される効果

🔵出張先や外出先からでもリモート環境から起案(申請)、承認、および決裁を行うことができます。
🔵承認の進捗状況をシステム上で可視化できるため、現在のステータスを申請者が正確に把握し、業務の停滞を防ぐことができます。
🔵紙の書類を出力・保管する必要がなくなり、保管スペースや管理の負担を削減することができます。
🔵起案(申請)から決裁に至る一連の履歴がシステム上に自動で記録され、後から書き換えができない状態で保存されるため、確実な記録に基づいて組織運営の透明性を客観的に高めることにつながります。

 

■承認・決裁システム

規則の改定を経て導入されたシステムは、従来の『紙と押印』による制約を解消し、手続きプロセスの可視化と意思決定の迅速化を実現しました。

【システムの主な特徴】
・これまでの紙による起案(申請)と変わらない感覚で、内容を入力できる画面や項目の設計としたため、職員が戸惑うことなく利用できます。
・Webシステムとして構築されているため、出張先などのリモート環境からでも、パソコン等を通じて確認をスムーズに行うことができます。
・内部開発で構築しているため、業務フローの変更や機能追加にも迅速かつ柔軟に対応できます。

 

 

導入にあたっては、従来の「紙と押印」による実務からの移行において、新システムの操作を職員がスムーズに習得することが課題となりました。そのため、全職員を対象とした操作説明会を開催し、実際にシステムを体験できる機会を設けることで、本運用へのスムーズな移行と実務における操作の定着を図りました。

 

3.経理システムの電子決裁化と機能拡充

承認・決裁システムの導入に合わせ、経理システムについても、全面的な電子化を行い電子上で起案(申請)・承認・決裁が可能となりました。
従来は、システムを利用しつつも最終的には紙で出力して決裁を回す手続きのため、手戻りや保管作業に多くの手間がかかっていました。しかし、現在は一貫してデジタルで完結する仕組みに改善されています。
さらに、電子帳簿保存システムと連携させることで、受領した請求書などの証憑を電子帳簿保存法に準拠した形式で保存しています。

 

 

 

4.導入前後の比較と成果

 

導入前と導入後の比較

項目 導入前(紙ベース) 導入後(電子化)
承認に要する平均日数 2〜3日

  • 物理的な回付に時間がかかる
  • 承認者の在席待ちが発生
  • 書類の所在が不明確
約1日

  • 即座に電子回付可能
  • 自動通知で迅速な対応
  • 進捗状況が可視化
↓ 50〜66%削減
書類の保管 書庫に紙を保存

  • 保管スペースが必要
  • ファイリング作業が発生
  • 検索に時間がかかる
  • 劣化・紛失のリスク
データベースで自動保存

  • 保管スペース不要
  • 瞬時に検索可能
  • バックアップで安全管理
  • 劣化・紛失リスクなし
実績:
年間約1万枚(4箱分)削減
コスト 各種費用が発生

  • 印刷費
  • 用紙代
  • 郵送費
  • 保管費用
コスト構造の変化

【削減されるコスト】
  • 印刷費削減
  • 用紙代不要
  • 郵送費不要
  • 保管スペース削減
【新たに発生するコスト】
  • クラウドサービス利用料
総合評価:
長期的には削減効果が見込まれる
事業継続性(BCP)への対応 困難

物理的な出勤・押印が必須
【課題】

  • 災害時による書類の紛失リスク
  • 交通遮断などによる承認・決裁の遅延
  • 被災時に重要な意思決定の手続き停止
維持・継続が可能

クラウド環境の活用により、物理的な出勤が制限される状況でも手続きが可能
【BCP強化】

  • 重要書類のデータ保護(紛失リスク回避)
  • 災害時における意思決定手続きの維持
  • バックアップ体制による確実なデータ管理

※数値は各課の平均的な処理時間や年間の用紙購入量に基づいた推計値です。

 

上記の比較が示す通り、電子化によって承認スピードが向上し、平均約1日で決裁が完了する体制が整いました。他には、ある課では導入前1年間は書類保管箱6箱分だったものが、導入後1年間は2箱で済みました。保管箱1箱はおおよそ2,500枚の紙に相当するため、削減分4箱で約1万枚の削減効果があったと推計しています。このように、紙の使用量削減という形でも成果が現れています。

 

■職員の声

・「以前は書類を机に置いたまま数日承認が進まないこともありました。」
・「新しい決裁・承認システムのおかげで、出張先でもリモート画面から確認ができるので、業務の停滞が減りました。」
・「決裁にかかるスピード感が変わり、以前は「書類がどこにあるのか」を探す時間もありましたが、今はすぐに確認でき、
 意思決定が迅速に行えるようになりました。」
・「承認の順番が回ってきたことを知らせる通知が届くため、こまめに確認する必要があり、
 対応の手間が増えたと感じることもあります。」

 

 

これらの比較結果と職員の声から、電子化によって承認・決済までのスピードの向上、業務停滞の防止、書類保管や管理にかかる負担の削減といった成果が得られていることが確認できました。承認通知への対応が増える場面もありますが、全体としては起案(申請)から承認・決裁に至る進捗状況がシステム上で可視化されたことで、書類の所在確認や状況把握が容易になり、結果として組織全体の意思決定の迅速化につながっています。

 

5.まとめ

今回の承認・決裁および経理システムの電子化は、長年続いてきた「紙と押印」を前提とした 内部規則を電子化に対応するものへと改定し、これまでの手続きをそのままシステム上へ移行することから始まりました。そのため、新たな運用や手続き方法を検討する必要がなくなり、電子帳簿保存法への対応も踏まえたシステム構築が並行して進められました。

財団独自の業務要件に対応できるノーコード開発ツールを用いた内製開発を選択し、制度面とシステム面を同時に整備したことで、実効性の高いデジタルシフトを実現することができました。
システムの維持管理に伴う継続的な費用(サービス利用料等)は発生するものの、これまで紙書類の印刷・郵送・書庫での保管等にかかっていた各種事務コストや管理負担を大幅に削減できたことから、総合的な費用対効果は高いと考えています。進捗状況の可視化は、手続きの停滞を未然に防ぐだけでなく、書類の所在確認などにかかる業務時間を削減することにつながっています。
今回のプロジェクトは、単なるペーパーレス化にとどまらず、業務効率化・コスト削減 を同時に実現する取り組みとなりました。

当初想定していた電子化の仕組みは無事に構築を完了しましたが、今後は内製開発の強みを活かし、将来的な組織改編や運用の見直しが発生した場合でも、柔軟にシステムの保守・管理(メンテナンス)を行える体制を維持してまいります。

財団では今後も現場の声を取り入れながら、より利便性の高い仕組みづくりを進めてまいります。